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三角な日本酒。
2月25日午後4時45分
「いらっしゃいませ。」
『三角屋』の小汚い店内に入る。いつもそうなんだけど、土日の午後は競馬帰りの客でいっぱいだ。
みな酒が入っているため声がでかい。「タラレバ」の話が嫌でも耳に入ってくる。まあ僕も競馬好きだったから気持ちは痛いほど分かる。
石和のWINSから少し離れたところにあるこのラーメン屋は、創業明治42年という歴史のある店で、僕は行くと必ずラーメンと小肉めし(セットで750円。ラーメンのみだと500円)を頼む。
醤油の味が立った、味は濃いけども油はほとんど浮いていない、昔ながらのスープ。麺は細い縮れ麺。メンマたっぷり。ナルトも嬉しい。海苔は2枚。具材の中で唯一気に入らないのがチャーシュー。脂身が一切なく、硬すぎて美味しいとは思えない。
最初この店で食べた時に、店側の入れ忘れかと思ったのだけど、ネギが入っていないのもこの店のラーメンの特徴である。慣れるとこれはこれでいいと思える。
肉めしは桜肉(馬肉)を使っている。玉葱など他の具材はナシ。桜肉オンリーの肉めし。これまた濃い味付けで、県外の方は少し驚くかも知れない。山梨は基本的に味付けが濃い。
「ラーメンとしょう肉めしをください。」
どこに座るか決める前に店員にそうオーダーした僕は、ハンチング帽をかぶり競馬新聞を眺めながら、瓶ビールを手酌している60過ぎぐらいのおっちゃんのテーブルに相席した。
ビールを飲み続けるおっちゃん。手をつけずにいるラーメンはもうノビノビになっている。
「お待たせしました。ラーメンとしょう肉めしです。」
僕はこの日、朝から何も食べてなかった。だから一気に掻っ込んだ。
そして僕が食べ終わる頃、ハンチング帽のおっちゃんは店員を呼んだ。
「…酒。」
数秒後、店員はおっちゃんの手もとで日本酒を注いだ。グラスから溢れる日本酒がキラリと光った気がした。
「…今日は負けた。」
おっちゃんは店員にそう言うと、日本酒を一口飲んでから、ようやくラーメンをズズっとすすった。
うんうんとうなずく店員と目があった。僕もうんうんとうなずいた。
「ごちそうさまでした。」
会計を済ませ、店から出るときにもう一度店内を振り返ってみると。
おっちゃんのグラスはもうカラだった。
〔text.The Gag Council 〕
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